近況その他あれこれ - 98
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片品村の山中の生活 

 私(笠松亮)は、東京のアパートを引き払って群馬県の片品村に引っ越して6年になりますが、どうやら田舎の人になってしまった気がします。例えば距離感覚ですね。ここでは「歩いてすぐその先」と言えば、まあ2〜3キロ…とまでは言わないにしても、かなり先であることを覚悟しなければなりません。東京ではせいぜい数百メートルのことでしょう。大体、移動するのは車で、徒歩で買い物には行けません。畑のなかの道を歩いていたりすると、前方後方から来る車、たいてい黄色ナンバーの軽ですが、スピードを落として怪訝な顔をしていきます。知り合いだったりすると、どうかしたかと聞かれます。実際昨年の夏のことですが、ちょっとした運動のつもりで家の背後の山に登り、反対側に降りて、疲れてトボトボ歩いていたら、追い越した軽が10メートルほど先で止まって待ち構えていて乗せてくれました。確かに家まではあと3キロぐらい、歩きとおす意思はあったものの、ありがたかったですね。白菜や大根をよく貰ったりする農家の人でしたが。日常の生活としてはそんなものです。

 情報収集という面では、新聞はちゃんと来るし、インターネットとデジタル衛星テレビがあるので、遅れをとることはないのですが、見る番組の選択はだいぶ違うでしょうね。私はもともと興味の向き方(あるいは志向性)のせいもあってか、民放の娯楽番組は全く見ず、ニュースとドキュメンタリー番組と映画だけです。質が高いものだけ、といいたいところですが…。しかし、「トイレの神様」ぐらいは知ってます。ストーリーソングとしていいですね。ほろりとさせられます。

 毎日の具体的な暮らしはどうか、ということを少し紹介しましょう。最近は「古文書を読む会」というグループに入って、江戸時代や鎌倉時代の古文書を読んでいます。貞永式目など、毛筆で書かれたもの(そのコピー)を解読するわけです。この前その活動の一端として、近くにある養蚕農家を訪ねました。

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 群馬県は、富岡製糸工場で知られるように、養蚕が盛んなところだったので、 片品村にも関連する事跡があります。私の家の周りにはいまでも桑の木がたくさん残っていますし、2階、3階が蚕棚だった古い民家もあります。上の左の写真は、100年以上も前、戊辰戦争の時代に建てられたもので、かつては永井紺周郎という人による養蚕技術の教習所でした。明治時代に使われた機織機や糸巻きのリールなどが残っています。そして、隣接する倉の中には掛け軸や和綴じの文書が無造作に積み上げられているのですが(右の写真)、それを読んでこの村の生活の歴史を具体的に探って行こうという訳です。

 この文書の表紙には慶応四年という文字が読み取れます。これがタイムスリップする入り口です。独特の古臭いにおいがマニアックな気分を盛り上げてくれます。実はこれらの発見や発掘を少しずつ記録していって文書にまとめ、今につながる人々の生活文化の歴史として近い将来役場の予算を引っ張り出して公刊しようと私はひそかに狙っているのですが。ま、死ぬ前に。

 しかし、気分は古い方にだけ向いているわけではなくて、環境を快適にする前向きの努力もちゃんとしてます。例えば、昨年は家の床をくりぬいて掘り炬燵を作りました。全て自力でやったのです。普通は大工さんに頼むというものでしょうが、私も以前はそう考えていましたが、田舎生活というのは基本的に全て自分でやる、というのが普通の考え方です。で、漠然と数年前からイメージしていたものを現実にしてやろうと決心したわけです。丸鋸や鉋などの道具を一式収納庫から引っ張り出してきて、正確に寸法を測り、床板を切りました。一瞬緊張しました。何しろしっかり本格的に作られた家に大きな穴を開けるのです。うっかり土台を切ったりすると床が抜けてしまいかねません。

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 左は予定のサイズを切り出した状態。床材は硬くて、丸鋸をまっすぐに進めるのに苦労しました。右の写真では床下が見えます。地面まで1メーター50センチほど。床面から40センチの深さに新しい土台を作って炬燵の床面にします。もともとの床板は、冬は寒いので当然の処置として断熱材をはさんで二重になっています。

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 床と側面に板を張り、一見檜風呂のような堀り炬燵の形体が出来上がりました。そこに支柱を4本取り付け、天板を載せて完成しました。着手してから10日。大工さんに頼めば2,3日で出来ることですが、こういうのは自分でやってそのプロセスを楽しむものです。結果として仕上げも綺麗で、大いに満足。我ながら雰囲気もいいです。今は冬なのでタオルケットを掛けて、床にはホットカーペットを敷き、ぬくぬくと暖まってます。右奥に見えるギターは、浜崎維子さんのご主人から直々に頂いた手づくりの一品ものです。その手前は梅酒を作っている甕。ほかにも、一昨年は庭にレンガでピザを焼く石窯を作ったりしてます。

 田舎の環境にどっぷり浸かって、まあこんな生活ですね。価値観も変わります。より広く、快い方向に、と思えるのですが。

 笠松 亮

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上智大学外国語学部英語学科 昭和39年入学43年卒業組ホームページ
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