この前は馬込君からのお便りと著書でしたが、今度は藤本直君から彼の編著になる『類語玉手箱』というCD-ROMが送られてきました。このホームページは一時書評欄になりそうですが、ともかくご紹介しましょう。
百科事典がCD-ROMになれば便利ですね。実際そういう製品は、マイクロソフトのENCARTAやBOOKSHELFはじめ、多くのソフト会社・出版社から出ています。辞書や事典の類も多く、使い慣れれば便利なものです。『類語玉手箱』はあえて言えばこのコンセプトに入るものでしょうが、何しろまったく一個人の作業による成果として、ユニークなものです。彼自身の言葉を引用すると、
「当初は、とにかく必要に駆られ、あまり興味も感じないまま、言葉を拾ってはメモるという作業を続けましたが、いつの頃からかこの作業がとんでもない意味をもつと気づくようになりました。たんに言葉を集め、分類するという作業なのですが、長く続けるうちに言語情報の厚みが増してくるだけでなく、周囲にあふれる言葉、表現、文章がどこまで当人のありようから出てきたものか、百発百中とまでいかなくても、かぎ分けられるようになったのです。…
「20万語、30万語、40万語というレベルの言葉と向き合うということは、普通はほとんど意識されることのない無数の(修辞矛盾ですが無名の?)言葉に洗われ、磨かれることだと思っています。あるいは鍛えられたのかもしれません。世の大半の人々にとって、言葉というのはおそらく、意思伝達のための手段に過ぎないという受けとめ方でしょう。それはそれで不都合はありませんが、ヨコのもの(英語)をタテ(日本語)にするという難題、加えて、吟味しながら言葉を集め、整理するという営為を日々連ねてきた当方に言わせれば、そこは言葉の神によって支配される広大なワンダー・ランドにほかなりません。ここでの小生の"ひとり遊び"はさらに続くことになります。…」
CD-ROMには使い方を書いた簡単なインストラクションが添付されています。パソコンのCD-ROMのトレイに入れると上のようなExcelの画面がでてきます。基本語彙、該当漢字、意味と類義語、という一覧表になっています。検索はExcelの検索機能を使って行います。慣れるまで少々工夫がいりますが、目的によっては便利です。例えば、「気」の項目を見ると、意味と「気」を含む関連表現が42行にわたって集められています。日本語の表現がいかに多様であるか、一目瞭然です。
なお、著者の藤本君は、皆さんの中からこのCD-ROM『類語玉手箱』のモニターを募集しています。興味のある方は是非問い合わせしてください。メールアドレス、彼自身のホームページはこちら。